キプロス金融禍、何の為のEU参加? [EU]

                                (感想) キプロスは、なぜロシアの罠に嵌ったのか。
                                       EU加盟後も、疑惑を残したまま、とは。

                                    キプロス島の一部は、今でも英国領だから・・・・。
                                       ギリシャ系(南部)とトルコ系(北部)の分断。
                                    地理的な重要性から、
                                       シリア、イスラエルも虎視眈々とか。

                                        まるで、金融を口実にした戦争だ。


〔シナリオ〕キプロス支援、合意できない場合の展開
    2013年 03月 22日 09:21 JST

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK835736120130322

 [ブリュッセル 21日 ロイター] 欧州連合(EU)はキプロスに対し、25日の営業時間終了までに、約60億ユーロを調達する計画をまとめ、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)と金融支援で合意するよう求めた。

 欧州中央銀行(ECB)は、支援で合意できない場合、キプロス向けの緊急流動性支援(ELA)を中止すると表明している。

 キプロス経済は、銀行・金融・観光に依存しており、ELAが断たれた場合、国内経済は崩壊しかねない。

 銀行は25日まで休業となっており、それまでに合意を成立させる必要がある。

 以下に考えられるシナリオをまとめた。

 
 <支援策で合意、銀行が営業再開>

 政府が銀行休業を延長しない場合、大手リテール銀行(バンク・オブ・キプロス、キプロス・ポピュラー銀行、ヘレニック・バンク、USBバンク)は26日午前から営業を再開する。

 この時点までにEU・IMFとの合意が成立すれば、大規模な混乱を回避できる公算が大きい。

 特に海外預金者から大量の預金の引き出しがあるとみられるが、ECBは引き続き緊急流動性支援を実施できる。

 市場がこれを好感し、落ち着きを取り戻せば、最終的には資金が国内に戻る可能性もある。

 これが最善のシナリオといえるが、この場合も銀行の再編は避けられないとみられる。


 <支援策で合意できないまま、銀行が営業再開>

 25日遅くになってもEU・IMFとの合意が成立せず、銀行休業も延長されない場合は、混乱が拡大する可能性が高い。

 銀行が営業を再開した場合も、預金の引き出しを求める顧客が殺到し、早期に営業中止を余儀なくされる恐れがある。

 特に国内2大銀行で今回の問題の影響を大きく受けているキプロス・ポピュラー銀行とバンク・オブ・キプロスはその可能性が高い。


 銀行休業が延長される可能性もあるが、預金者は現在、現金自動預払機(ATM)からしか預金を引き出せない状況で、休業が長引けば、社会不安が高まる恐れがある。

 ただ、どちらのシナリオも理論上の仮定で、ECBの支援を受けられなければ、銀行は破綻するとみられる。


 <資本規制>

 EU・IMFとの合意が不可能であることが25日までに判明すれば、キプロス議会が金融機関に対する資本規制を導入する可能性がある。

 法案はすでに議会に提出されている。

 資本規制は、当面の預金流出を制限する内容となる可能性がある。危機発生前の預金残高は700億ユーロ前後。

 ただ、資本規制を導入しても、2大銀行をはじめ、銀行の支払い能力の改善にはつながらない見通し。
  

 <バッドバンクの設立>

 EU高官は21日、「グッドバンク」と「バッドバンク」の設立が必要になる可能性があるとの認識を示した。

 最善のシナリオでは、グッドバンクがすべての健全債権と預金保険対象の預金(10万ユーロ未満の預金)を継承し、バッドバンクがすべての不良債権と預金保険対象外の預金(10万ユーロ超の預金)を引き継ぐ。

 EU高官は、バッドバンクの預金に対し、30─40%の「ヘアカット」を適用する必要があると指摘している。


 ただ、キプロスには預金保険の裏付けとなる資金がなく、預金保険対象の預金も全額は返還されない可能性がある。

 国内では銀行への不信感が募っており、救済策で合意が成立し、ECBが緊急流動性支援を継続した場合も、銀行が営業見合わせを余儀なくされる恐れがある。

 キプロス中銀は21日、国内2位のキプロス・ポピュラー銀行には破綻を避けるため再編が必要との認識を示した。


 <ユーロ離脱の可能性>

 銀行システムが崩壊した場合、国内経済は麻痺し、一時的に混乱が広がるとみられる。

 その後の経済の建て直しには、通貨の大幅な切り下げが最も有効とみられるが、通貨切り下げには、ユーロ離脱が必要になる。 


 EU高官はロイターに「金融セクターが崩壊すれば極めて大幅な通貨切り下げが必要になり、自国通貨を復活させる以外に道はなくなる」と述べた。

 ただ、一部のユーロ圏当局者は、経済が破綻した場合も、ユーロ圏の内部で対応することが望ましいとの認識を示している。


 <伝染>

 政策当局者は、今回の問題が他のユーロ圏諸国に波及するリスクは小さいとみている。

 ギリシャの国内総生産(GDP)はユーロ圏全体の2%と小規模だったが、キプロス経済はさらに規模が小さく、ユーロ圏全体の0.2%にすぎない。


 キプロスの銀行部門の規模はGDPの8倍、海外からの預金が多いなど、特殊な状況といえる。当局者は今回のような問題が他のユーロ圏で繰り返されることはないとみている。

 銀行不信が他のユーロ圏諸国に広がれば、ECBが信頼回復まで流動性を供給することが可能だ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


コラム:キプロスの預金課税が正しい理由
    2013年 03月 19日 18:39 JST

http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE92I05G20130319?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true

By Peter Gumbel

欧州連合(EU)がまとめたキプロス支援案に対する反応は、当初の「ショック」が落ち着き、ありきたりとも言える「非難」に変わった。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は論説で「欧州が支援策でまた失敗」の見出しを掲げたほか、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストを務める米経済学者ポール・クルーグマン氏は、「まるでギリシャ語やイタリア語で『預金を下ろしておこう』と書かれたネオンサインを掲げているようだ」とブログに綴った。

広く報道されているように、今回の支援策には重要な増税要素がある。キプロスに銀行口座を持つ人は、キプロス人であろうとなかろうと、預金に1回限り最大約10%の税金が課されるというものだ。徴収税額は58億ユーロ(約7200億円)に上るとみられる。

欧州全土で銀行の取り付け騒ぎが起こるという物騒なシナリオもあり得なくはないが、EU当局者がキプロスへの措置は例外的だと強調したことで、欧州の市場は18日午後までに落ち着きを取り戻した。

EUがこうした措置に踏み切ったのには、やむにやまれぬ事情が2つある。1つは、キプロスが1990年代にロシア人にとってのオフショア金融センターとして生まれ変わり、不透明なタックスヘイブン(租税回避地)の世界リストで上位に入っていたことが挙げられる。国際的な圧力が増す中、キプロスは2004年にEUに加盟するため、オフショア課税の枠組みを廃止したが、同国の銀行への疑念はぬぐえていない。

独シュピーゲル誌によれば、ドイツの外事情報当局は昨年11月、EUのキプロス救済基金はロシアの富豪の懐を潤すだけにすぎないと警告した。同情報当局は、キプロスの銀行にあるロシアマネーを260億ドル(訂正)と試算しており、これは今回のEU支援策のたっぷり2倍以上にあたる金額だ。ロシアの富豪ドミトリー・リボロフレフ氏は、国内最大手キプロス銀行の株式約10%を保有している。キプロスは、国際水準を満たすと約束しながらも潔白とはみなされていない国の1つとして、経済協力開発機構(OECD)のリストでは「グレー」な国家とされている。

このような状況で、厳しい条件なしにキプロスに国内総生産(GDP)の半分以上に当たる支援の小切手を切ることは、政治的な矛盾を生む。フランスとドイツは長年、タックスヘイブンの危険性を非難しており、不正を取り締まるため、G8やG20などの場でも他国に協力を呼び掛けてきた。キプロス国民自身に痛みを求めないとなると、独仏のこれまでの厳しい態度とは矛盾が生じることになる。

人気のあるタックスヘイブンでさえ100%安全ではないと示した点で、EUは国際金融全体にとって良い仕事をしたと言えるかもしれない。

今回のEUの支援策を支持する第2の理由は、モラルの観点というより経済的な打撃といった観点だ。2008年当時のアイルランド人やスペイン人、ギリシャ人に尋ねてみればいい。1回限りの家計への非常に厳しい影響か、5年にわたる経済低迷のどちらがいいかと。はっきり答えられる人は少ないだろう。

こんな選択は誰もしたくないし、キプロス国民には選択肢が与えられているわけでもない。しかし、こうした短期型の厳しいショック療法には前例がある。アイスランドだ。

アイスランドでは2008年、銀行が経営破たんに陥り、オンライン口座にあった英国人やオランダ人の預金も消滅してしまった。アイルランドやギリシャとは違い、アイスランドは政府の資金を投入して銀行を救済する道を選ばなかった

同国のグリムソン大統領は、フランスのインターネット新聞とのインタビューで「われわれは今回の危機が、単なる経済や金融に関するものではないことに気づいた。これは政治、民主主義、そして法律に関わる根深い危機なのだ」と語った。アイスランドでは、銀行の従業員や政治家が犯罪捜査の対象となったほか、なぜそもそも国家がこうした状況に陥ったのかを調査する特別検察官を設置することなどを含め、多くの法的措置が行われた。

アイスランドの約3倍の人口を抱えるキプロスだが、銀行預金に関する騒ぎが一旦落ちつけば、国民はアイスランド国民と同じように、なぜ危機が起きたのかをつぶさに調べようとするかもしれない。

キプロス国民にとっての大きな問題は、なぜ銀行はロシアなどからGDPを軽く超える資金を引きつけておきながら、国全体を窮地に追いやるほどの状態になってしまったのかということだ。おそらく教訓は、タックスヘイブンであることに大した価値はないということだろう。そしてキプロスの場合にもこれが当てはまるのなら、EUの措置はこうしたことに気づかせた点で極めて有益だと言えるだろう。

*6段落目の260億ユーロを260億ドルに訂正します。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。